作り手の想い

運命を変えた、たったひとつの病気との出会い。

世界一やさしいチョコレートandew代表 中村恒星 

 

表皮水疱症」

 

たったひとつの皮膚難病が僕を突き動かした。

でもその難病の患者さんは、日本にたった数百人しかいない。

正直いうと社会には、ほぼ知られていない病気だ。

 

でも症状はひどく、その皮膚の病気が患者さんへもたらす身体への痛みは強烈だった。

 

「ポテトチップスを食べるとトゲの付いている板を食べているくらい痛い。」

 

患者さんは、痛みをこう表現する。

 

「そんな痛みを伴う病気がこの世の中にあるんだ。」

 

医学生の僕でも知らなかった。

 

しかも、表皮水疱症は先天性の病気である。

つまり、オギャーと生まれた時からこの病気と付き合って生きていくことになる。

その上、効果的な治療法はまだ確立されていない。

 

生まれつき皮膚が弱く、地滑りのようにぼろぼろと皮膚がこぼれ落ちる。

それに伴い、体液が外に出てしまうため、体内の栄養が外に出てしまう。

 

つまり、口の中が痛くて、食べられるものが少ない上に、身体から栄養が外に出ていくということ。

そのため、日々の体調管理に本当に苦労している方が多い。

特に、子どもの場合は、身体の成長がうまく進まず、低身長・低体重となることも。

 

とにかく、おいしく、痛みなく、たくさんの栄養をとってほしい。

 

その一心だった。

 

さらに僕の言葉に強烈に残っているのは、この言葉だった。

 

「食事って一緒に同じものを食べるから、幸せを感じるのに、私たちは、みんなと一緒のものを食べる機会も少ないんだよね。」

 

この言葉から、患者さんの中だけで完結してしまう商品を作ってもダメだと強く感じた。

 

贈り物として、患者さんと患者でない人が心の交流ができる食品ってなんだろう?

そして、シェアして一緒に食べやすい食品ってなんだろう?

 

考えに考え抜いた結果、「チョコレートだ!」と閃いた。

 

さらにチョコレートであれば、口の中でやさしく溶けるから患者さんでも食べやすいし、歴史的には薬として用いられていた過去もあるから栄養も摂りやすいはず。

 

そこに、最近ブームとなっている、人間に必要な全ての栄養素を含んだ食品である「完全食」の文脈を追加した。

 

「完全食チョコレート」

 

そのコンセプトはここから生まれた。

日本にたった数百人しかいない、希少難病の患者さんのため。

 

表皮水疱症患者会の代表、宮本恵子さんと旦那さんの満さん

札幌での、小さな挑戦。

ただ、完全食チョコレートの開発はやさしいものではなかった。

そもそも僕はショコラティエではない。

チョコレートの作り方も知らなかった。

食べるのはめちゃくちゃ好きだったけど、恥ずかしながら作り方は本当に知らなかった。

 

でも、自分でやるしかない。

 

そう思い、近くの製菓材料店に道具と材料を買いに行き、一人暮らしの小さなキッチンで開発を始めた。

 

スマホとにらめっこしながら、みようみまねで何度も作ってみた。

 

そして、ある程度は試作品ができたが、どうしても素人では限界なレベルまできた。

 

そのときに手を差し伸べてくれたのが、札幌にあるBean to Barチョコレートの専門店であるSATURDAYS CHOCOLATEさんだった。

 

 

とってもおいしいチョコレート専門店で、もともと客として何度がお店を訪れていた。

でも、全く知り合いでもない。

にもかかわらず、ホームページの問い合わせフォームから、皮膚難病の患者さんのためにチョコレートを開発したい。お手伝いいただけませんか。という主旨のメールを送った。

今思えば、とんでもなく図々しい行動だった。

 

でも、SATURDAYS CHOCOLATEの秋元社長は、快諾してくださった。

若者の熱意に胸を打たれたと。

 

こんなにかっこいい大人がいるんだと、逆にこちらが胸を打たれたのを鮮明に覚えている。

 

お世話になったSATURDAYS CHOCOLATEのショコラティエールさんたち

困難が続く開発。

完全食をチョコレートで実現する。

そもそもこのコンセプト自体が実現できるかすらわからなかった。

 

完全食とは、人間に必要な全ての栄養素をバランスよく全部摂取できる食品のことである。

タンパク質から、ビタミン、ミネラルまで全てである。

ドリンクやパスタ、パンなどでの先行事例はあったが、チョコレートはまだなかった。

 

チョコレートは、カカオマスとカカオバター、砂糖の絶妙なバランスと厳格な温度管理のもとで成立している。

原料もmg単位で、温度も0.1℃単位で管理される。

 

そんな精密な食品に、完全食にするためにアーモンドやチアシード、きな粉などを混ぜ込むので、予測できないことがたくさん起こる。

 

固まらない、渋みが出る、時間と共に味が変化するなどなど。

 

問題点を挙げればきりがない。

そんな問題点を何度も何度も議論をする中でクリアしていった。

 

たくさんの人に「完全食のチョコレートは無理だ。」と言われたこともあった中で、ずっと信じ続けてくれたSATURDAYS CHOCOLATEの秋元社長をはじめスタッフの皆様には本当に感謝しています。

 

開発を始めてから、9ヶ月。

ようやく満足のいく試作品が完成した。

 

 

栄養含有量も僕たちが求める水準を実現することができた。

 

 

札幌の温かさに溢れるチョコレート屋さんで、世界一やさしいチョコレートが産声をあげた瞬間でした。

実際に患者さんのもとへ。

しかし、本当の問題はここから。

ポテトチップスを食べるとトゲのついた板を食べているくらい痛い。

そう表現される患者さんたちが食べることができるかどうか。

 

神奈川で開催された表皮水疱症の患者会の全国総会に試作品を持って行った。

 

初めて患者さんに直接食べてもらう。

 

正直、緊張が隠せなかった。

 

返ってきた感想は、「おいしい。」「食べやすい。」

 

本当に嬉しかった。

 

特に小さな男の子の患者さんが、お母さんの「おいしい?」の言葉にこっくりとうなずいたときは本当に嬉しかった。

 

子どもは大人より正直。

大人はちょっとまずくても我慢して食べることができるが、子どもはそれができない。

だから、お子さんの正直な感想は本当に嬉しかった。

 

そして、患者さんたちの笑顔をみたとき、andewなら世の中を変えられると思った。

 

アンジュ」という名前に込めた想い。

この名前を一緒に考えてくれたのも、医学生のチームである。

東京歯科歯科大学医学部の波多野裕斗が代表を務めるデザインチームにお願いした。

彼らと一緒に仕事ができたことは今でも誇りに思っている。

andew = and you

 患者さんが、みんなと同じものを一緒に食べる幸せを感じたい。

その言葉を大切にしました。

 

あなたの大事な人と一緒に食べて欲しい。

 

「あなたと、一緒に。」

 

そんな想いを込めました。

 

また、andewのロゴは、手と手を繋いでいる様子を表現しています。

そしてその手と手がカカオ豆を表現しています。

 

人とひとが手を取り合い、病気を超えていく。

 

そんな温かい世界をandewを通して実現していきたい。

 

自身の経験と医学生としてできること。

 

3歳頃、病室での不安な気持ちや寂しさは幼いながらに感じていたのでは今でも覚えている。

 

外で走り回りたいけど、病室にいなくてはいけない。

隣のベットに入院していた子と一緒に病室の窓にA4の紙を貼って、アンパンマンやバイキンマンの絵を一緒に描いたりしていた。

 

幼い頃はいくらか不自由はあったが、根治手術を行ったおかげで何も不便のない生活をできるようになった。

高校時代も甲子園を目指して野球をできるくらい元気だった。

時には、自分が心臓難病を患っていることを忘れるくらいに。

 

この経験から、病気を持ちながらもどう社会の中で生きていくのかを深く考えるようになった。

 

しかし、僕はまだ医学生であり、医師ではない。

 

患者さんを診察することはできないし、治療することもできない。

 

でも、医療に携わる者として、早く貢献したかった。

 

病院の外、社会の端。

 

僕はこう表現している。

 

患者さんが一歩病院の外に出て、社会の入り口に立った時に、どう患者さんに接する社会を創ることができるか。

 

もちろん、病院の中で患者さんの病気をどう治療するかは最も重要なことである。

しかし、それと同じくらい病院の外で病気とどう付き合い、一緒に生きていくかということも重要である。

 

患者さんにとって優しい社会であるように、andewがそのきっかけとなれば嬉しい。

 

 

アンジュを通して目指す世界

 

僕は、andewを通して「患者と周囲の人々が病気と共存し、理解し合い、手を取り合う世界」を実現したい。

 

決して、病気を患者さんの世界の話だけで終わらせることのない社会。

 

あなたの周りにも病気を持ちながら生きている人はきっといるはず。

 

ぜひその方にandewを届けてほしい。

そして、その人にあなたはひとりではないと伝えてほしい。

病気をもっていることで何か生活に制限がある人は、僕たちが考える以上に閉塞感や疎外感を感じているものです。

 

ぜひ、チョコレートを送ることで「あなたはひとりではない。困っている時、辛い時は連絡してね。」と伝えてほしい。

その言葉で直接病気がなることはないけど、心が救われる人はたくさんいるはず。

病気を治すことが一番大事。

でも、その病気を持ちながらもどう病気と付き合い、生きていくか。

これも同じくらい大事なこと。

 

病気を治すことは、医療従事者にしかできませんが、心をサポートすることは、みんなができます。

 

そして、最後にandewを優しさの連帯の証にしてきたい。

 

本気でそう思っています。

 

andewは、そんな想いのもとに生まれた、世界一やさしいチョコレートなのです。

 

世界一やさしいチョコレートandew代表 
中村恒星